映画レビュー完全版】『猿の惑星』シリーズ徹底解説|進化する知性と人間性を問うSFの金字塔

SF

今回は、SF映画の金字塔とも呼ばれる『猿の惑星シリーズ(Planet of the Apes)』をまとめてご紹介します。

「猿が支配し、人間が支配される世界」という強烈な世界観で1968年にスタートした本シリーズは、リブート版も含めて50年以上にわたって世界中で愛されるSFサーガへと進化しました。


🗂 全シリーズ作品一覧(公開順)

🦍 旧シリーズ(オリジナル5部作)

  1. 猿の惑星(1968)
  2. 続・猿の惑星(1970)
  3. 新・猿の惑星(1971)
  4. 猿の惑星・征服(1972)
  5. 最後の猿の惑星(1973)

🔁 リメイク&リブート

  1. PLANET OF THE APES/猿の惑星(2001・ティム・バートン版)
  2. 猿の惑星:創世記(ジェネシス)(2011)
  3. 猿の惑星:新世紀(ライジング)(2014)
  4. 猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)(2017)
  5. 猿の惑星/キングダム(2024)

🧠 シリーズの魅力とは?

  • 社会風刺と哲学性:人間社会の姿を猿の世界に投影する構造。
  • 時代ごとの映像革新:特殊メイク→CGの進化がそのまま映像史。
  • 人間性とは何か?:支配と服従、理性と本能を問い直す壮大なテーマ。

各作品レビュー(ネタバレなし)

■『猿の惑星』(1968)

文明が崩壊した未来、宇宙飛行士がたどり着いたのは「猿が支配する惑星」。
知性ある猿と、言葉を話せない人間。
衝撃のラストは映画史に残るトラウマ級
📌 映画史のマスターピース。絶対に観るべき一本。


■『続・猿の惑星』(1970)

前作の直後から始まる直接の続編。
地球破壊の危機と地下に潜む“人間の生き残り”の正体が描かれる。
📌 世界観はより拡張、ややカルト色強め。


■『新・猿の惑星』(1971)

今度は未来の猿たちがタイムスリップして現代のアメリカに。
人種差別の比喩がより明確になり、シリーズ屈指の皮肉な社会批判作。
📌 コーネリアスとジーラの哀しみが深い。


■『猿の惑星・征服』(1972)

ついに“猿の反乱”が現代で始まる。
奴隷として扱われた猿が立ち上がる姿は、当時の公民権運動のメタファー。
📌 クライマックスの演説は鳥肌もの。


■『最後の猿の惑星』(1973)

人間と猿の共存は可能なのか?その答えが提示される最終章。
やや小規模だが、テーマ性は深く、静かで重い結末が待つ。
📌 “最後”の意味がじわじわくる。


■『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001)

ティム・バートン監督が贈るリメイク。
独自のヴィジュアル世界と予想外のラストが話題に。
📌 好みは分かれるが、“猿”の描写は見応えあり。


■『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011)

新たな始まり。アルツハイマー治療薬の実験から知能を持つ猿“シーザー”が誕生。
人間と猿の逆転の始まりを描く、ドラマ性に富んだ感動作
📌 シーザーの「NO!!!」に世界が震えた。


■『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014)

人間が崩壊し、猿の社会が発展。
シーザーとコバの対立が、人間社会の縮図として描かれる。
📌 道徳と暴力のジレンマ。猿版シェイクスピア。


■『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017)

シーザーの旅の完結編。戦争・復讐・和解という重いテーマ。
まるで“西部劇×旧約聖書”のような叙事詩。
📌 静かに涙があふれる、シリーズ屈指の名作。


■『猿の惑星/キングダム』(2024)

舞台は前作から数百年後。猿が完全に支配し、文明が再構築された世界。
人間の復活と、新たな“知性の波”が物語を再び揺さぶる。
📌 新シリーズの幕開け。希望と恐怖が混在。


📝 まとめの感想|なぜ『猿の惑星』は“映画史に残るシリーズ”なのか?

『猿の惑星』シリーズは、ただのSFアクションや娯楽大作ではありません。
むしろ、人間社会の本質、知性と倫理の境界、そして文明の脆さを深く描き出す“映画という形式を借りた哲学書”のような存在です。

🌍 シリーズを通して描かれる「人間の傲慢と崩壊」

オリジナルシリーズでは、核戦争後の未来に“猿が人間を支配する”という衝撃的な世界が描かれます。
しかしその奇抜な設定の裏には、「人間が作り出した技術や権力が、やがて自らを滅ぼす」という鋭い自己批判の視点が存在します。

1968年の第1作目『猿の惑星』が発表された当時、アメリカはベトナム戦争と公民権運動の真っ只中。
この作品は、単なる空想科学の世界にとどまらず、時代そのものに対する風刺と警告を投げかけていたのです。

「人間こそがもっとも危険な存在である」──
この言葉は、今もなお、環境破壊や差別、戦争が続く現代社会に響き続けています。


🧠 リブート版が描いた“知性の目覚め”と“共感の再構築”

2011年から始まったリブート3部作(『創世記』『新世紀』『聖戦記』)は、猿と人間の立場が入れ替わるまでの経緯を非常にリアルに描いています。

ここで主役となるのが、猿の“シーザー”。
彼は人間の言葉を学び、感情を持ち、判断し、やがて人間以上に人間らしいリーダーへと成長していきます。

このシリーズが素晴らしいのは、観客が人間よりも“猿”に感情移入する構造にある点です。
それは、「言葉が話せるかどうか」や「どの種族か」といった表面的な違いを超えて、
“どれだけ他者と共に生きようとするか”が真の知性だという、深いメッセージを宿しています。


🧬 映像技術と物語の融合

旧作では特殊メイクが話題となり、現代ではモーションキャプチャとVFXが猿たちをリアルに描き出します。
しかし、技術が進化してもシリーズの根底にあるテーマは変わりません。
むしろ、最新技術を駆使して“感情を持った目の演技”をリアルに表現できるようになったことで、より心に訴える作品になりました。

これはまさに、“テクノロジーとヒューマニズムの融合”といえる進化です。


🧩 全シリーズに共通する問い:「本当の敵は誰か?」

シリーズを通して投げかけられるのは、明確な悪役や正解のない、不安定で複雑な人間関係と社会構造です。

  • 支配される者が支配する側になるとき、同じ過ちを繰り返さないのか?
  • 「平和のため」と称して行う暴力は、本当に正しいのか?
  • 知性と感情を持った者は、必ず“倫理”を選べるのか?

これらはすべて、現代社会の私たちにも投げかけられている問いです。

つまり『猿の惑星』は、“遠い未来のSF”ではなく、私たちの社会の縮図であり、希望と警鐘を併せ持った寓話なのです。


🧭 あなたにとって「猿」とは、「人間」とは?

最後に問います。

もし、あなたがこの世界に「人間」としてではなく、「猿」として生まれていたら――
あなたは、今と同じように他者を理解し、共感し、戦いを避けられるでしょうか?

『猿の惑星』はそのような、立場を逆転させることでしか見えない真実をあぶり出すシリーズです。
これはSF映画であると同時に、“人間を映す鏡”なのです。


🎥 だからこそ、観てほしいシリーズ

  • アクション映画として迫力を楽しめる
  • SFとして世界観に没入できる
  • 哲学として考察しがいがある
  • そして、“今この社会”を見直すきっかけになる

『猿の惑星』シリーズは、あなたの映画観を変えるだけでなく、
あなた自身の“人としてのあり方”にも静かに問いを投げかけてきます。

今こそ観るべき、全人類へのメッセージを内包した壮大なサーガ。
それが『猿の惑星』です。


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