【映画レビュー】『イノセンツ』|子どもたちの無垢と残酷が交差する、静かなる超能力スリラー

ストーリー

今回ご紹介するのは、ノルウェー発の静かな衝撃作『イノセンツ(The Innocents)』。
2021年のカンヌ国際映画祭で絶賛され、2022年に日本でも劇場公開されたこの作品は、
子どもの視点から描かれる“悪意”と“力”の目覚めをテーマにした、知る人ぞ知る傑作スリラーです。


🎬 映画『イノセンツ』基本情報

項目内容
原題De uskyldige(英題:The Innocents)
公開年2021年(日本公開:2022年)
監督・脚本エスキル・フォクト(『テルマ』脚本など)
ジャンル超自然スリラー/ダーク・ファンタジー/心理ドラマ
上映時間117分
製作国ノルウェー/スウェーデン/フィンランド/デンマーク
主演ラーケル・レノーラ・フレットゥム、アルヴァ・ブリンズモ・ラームスタ
配信一部VODで配信中/円盤あり

🧠 あらすじ(ネタバレなし)

舞台はノルウェーの郊外、夏の集合住宅地。

新しく越してきた少女イーダは、姉のアナ(重度の自閉症を抱えている)とともに新生活を始める。
イーダはやがて、同年代の少年ベンや少女アイシャと出会い、4人で過ごすようになる。

しかし彼らの間には、**“不思議な力”**があることが明らかになり、
子どもならではの無邪気さと、予測不能な“残酷さ”が静かに加速していく――。


🌌 レビュー|“子どもは無垢ではない”という真実

🎭 子どもの視点で描く“モラルのなさ”

本作は、いわゆる「超能力映画」や「ホラー映画」とは一線を画します。
大人が介入せず、**子どもたちだけの世界で進行する“善悪の曖昧さ”と“感情の暴走”**をじわじわと描いていきます。

善悪の教育がまだ定着していない存在=子ども。
その子たちに力を持たせると、何が起こるのか? という恐ろしい問いかけが、この映画の根底にあります。


🧊 静けさが際立つ“北欧的ホラー演出”

ノルウェー映画らしく、音楽も少なめで、静かな空気と不穏な光が印象的。
何も起きていない風景が続くのに、観る者の心をザワつかせる演出がとにかく巧み。

子どもたちの“遊び”の中でふとした瞬間に、ぞっとするような行動が差し込まれる。
その無感情な暴力性が、ジャンプスケアよりも深く刺さります。


✨ 俳優陣がすごすぎる

特筆すべきは、子どもたちの演技力の高さ。
とくに主演のラーケル・レノーラ・フレットゥムとベン役のサム・アシュラフは驚異的。

言葉よりも表情と視線で感情を伝え、観客に「えっ、いま何を考えてるの?」と不安を植え付けてくる演技は、恐ろしく成熟しているとさえ感じました。


📊 評価まとめ

項目評価
スリル・不穏さ★★★★★
演出の静けさ★★★★☆
演技力(子どもたち)★★★★★
テーマ性★★★★★
エンタメ性★★★☆☆(重く静かな展開が中心)

👥 こんな人におすすめ!

  • 心理的にじわじわと来るホラー/スリラーが好きな人
  • 『ミッドサマー』『テルマ』『ぼくのエリ』など北欧作品が好きな人
  • 子どもの純粋さと残酷さを描く作品に惹かれる人
  • ジャンプスケアではない“静かなる恐怖”を求めている人

📝 まとめの感想|“無垢”が“無邪気”ではないと気づかされる恐怖

『イノセンツ』は、ホラー映画という枠に収まらない、哲学的な深さを持つスリラー作品です。

「子どもは純粋である」という幻想を、静かにそして容赦なく崩していく展開に、
観る側は息を呑み、知らぬうちに心を侵されていく感覚を味わいます。

また、映画全体が“音を使わずに恐怖を演出する”という点で非常に完成度が高く、
派手な演出がない分、リアルで生々しい恐怖がじわじわと残ります。

北欧の静謐な風景と、そこに潜む目に見えない感情の暴走――
これはまさに、“観る覚悟”が必要な一本。
「怖いけど美しい」「不快だけど目が離せない」、そんな知的ホラー体験を探している方に強くおすすめしたい作品です。


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