2022年10月14日に公開された邦画『もっと超越した所へ』は、恋愛の苦しさや依存、そしてそこからの“超越”を描いた現代の恋愛群像劇です。
一見すると「ダメ男に振り回される女たちの話」ですが、物語はそんな単純な構図ではありません。
観終わったあとには、「ああ、自分もこんな恋、してたかも」と妙に心がえぐられ、それでも前向きになれる――そんな不思議な魅力を持った作品です。
映画『もっと超越した所へ』基本情報
- タイトル:もっと超越した所へ
- 公開日:2022年10月14日
- 監督:前田弘二(代表作:『愛がなんだ』『婚前特急』)
- 脚本:根本宗子(原作舞台も同氏)
- 上映時間:120分
- ジャンル:恋愛/ヒューマンドラマ/群像劇
- 配給:ハピネットファントム・スタジオ
『もっと超越した所へ』のあらすじ
物語は、恋愛に悩む4人の女性たちの視点から展開します。
彼女たちはそれぞれタイプの違う“ダメ男”と付き合っていて、苦しみながらもなかなか抜け出せずにいます。
- 夢見がちな女優志望
- 安定を求めるOL
- 地元で自立を目指す女性
- 元カレとズルズルの関係にいる女性
それぞれの恋愛模様が交錯しながら、彼女たちが「今の自分を変えたい」「もっと前へ進みたい」と願う気持ちが丁寧に描かれていきます。
キャスト紹介|注目すべきは菊池風磨の“新境地”
映画『もっと超越した所へ』は、主演から脇役までキャスティングが絶妙。
俳優陣のリアルな演技力が、恋愛の“痛み”と“温度”をリアルに映し出しています。
- 前田敦子:恋愛に依存しがちな女性を熱演。元AKB48の肩書きを超えた女優力を感じる演技。
- 菊池風磨(Sexy Zone):自由奔放な彼氏役を自然体で演じ、アイドルの殻を破った存在感。
- 伊藤万理華:等身大の女子像がリアル。元乃木坂46とは思えない役への没入。
- 趣里、三浦貴大、千葉雄大、オカモトレイジなど、多彩な俳優たちが物語を引き締めています。
菊池風磨さんの映画初主演級の登場は、ファンのみならず「演技もいける」と感じさせる注目ポイント。彼の自然体の危うさと魅力が、作品のリアリティを高めています。
映画のテーマ|“恋愛=自己肯定”という罠
この映画の最大の魅力は、「恋愛」というものを単なるロマンスとしてではなく、“自己肯定と依存の入り混じる感情”として描いているところにあります。
- なぜ人はわかっていても、ダメな恋をやめられないのか?
- 恋をしていない自分に価値を感じられないのはなぜか?
- 愛されることでしか、自分を肯定できない人の苦しみとは?
登場人物たちは皆、不器用でまっすぐ。だからこそ、共感できるし、刺さります。
「幸せになりたい」のに、「誰かに愛されないと不安」
その矛盾が恋愛の本質であり、この映画が描き出した“もっと超越した所”とは、そういった感情を受け入れて、“自分の人生を自分の足で歩いていく”という決意なのだと思います。
映像・演出|前田弘二監督らしい“生活の温度感”
『愛がなんだ』や『婚前特急』でも知られる前田弘二監督は、“ありふれた日常”を切り取るのが本当に上手い監督です。
今回も、リアルな台詞回しと間の取り方が素晴らしく、まるで隣の部屋で起きている恋愛を覗いているような生々しさ。
ラストにかけての「少しずつ変わろうとする人たち」の姿が、じわじわと胸を打ち、映画館を出たあとに“自分を大事にしたくなる”ような余韻が残ります。
感想まとめ|恋に悩んでいる人にこそ観てほしい邦画
『もっと超越した所へ』は、きれいごとでは済まない恋愛の現実を、真正面から描いた良作です。
恋愛映画にありがちな「理想」ではなく、むしろ「こんな恋、したことある」という共感で心を揺さぶってきます。
恋に疲れている人
なぜか恋愛がうまくいかない人
もう恋なんてしたくないと思ってる人
――そんな人こそ、この映画に癒されるかもしれません。
『もっと超越した所へ』はこんな人におすすめ!
- 菊池風磨や前田敦子の演技を見たい人
- 共感できる恋愛映画を探している人
- 邦画のリアルな人間ドラマが好きな人
- 女友達と「わかる~!」って共鳴したい人
- 根本宗子の舞台作品が好きな人
総評・まとめ|『もっと超越した所へ』は、恋愛に“答え”を求める私たちへのエール
『もっと超越した所へ』は、恋愛を通して自己肯定感を求めたり、誰かに依存してしまう現代人の“心のクセ”を、痛々しいほどリアルに描いた映画です。
けれど、この作品がすごいのは、そうした弱さを「否定」するのではなく、「そのままの自分でもいい」と、やさしく受け入れてくれる点にあります。
映画に登場する女性たちは、決して完璧ではありません。むしろ欠点だらけで、視野が狭くなったり、見ていて歯がゆくなるような選択を繰り返したりします。でも、それがとても人間らしくて、見ているうちに「これは誰かの話じゃない、自分の話だ」と思えてきます。
恋愛は、美しいものばかりじゃありません。
楽しいだけじゃなくて、苦しいし、面倒くさいし、終わったあとには後悔することもある。
それでも、人はまた誰かを好きになってしまう。
――そんな矛盾や葛藤、そしてそこから抜け出そうとする意志までも、この映画はまるごと抱きしめてくれます。
特に、ラストに向けての登場人物たちの変化は、劇的な“成功”や“恋愛成就”といった派手なカタルシスではありません。でも、彼女たちがそれぞれの関係にケリをつけ、少しずつ自分の人生を取り戻していく過程には、確かな“前進”が見えます。これこそが、“もっと超越した所”へ向かう旅なのだと感じました。
恋愛に悩んでいる人、過去の恋に苦しんでいる人、自分の価値を誰かとの関係でしか測れなくなっている人。そんな誰もが、この映画から何かしらのヒントを受け取れるはずです。
答えを出すことが目的ではなく、「今の自分でもいい」と少し思えるようになる――それがこの作品が届けてくれる、最大のメッセージではないでしょうか。
『もっと超越した所へ』は、ただの恋愛映画ではありません。
それは生きづらさを抱えるすべての人の背中を、そっと押してくれる優しい映画です。
あなたが「もう恋なんて…」と思っている今こそ、この作品を観て、心を揺らしてみてほしい。
きっとそこに、“少し前向きになれる自分”が見つかるはずです。
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