今回は、2020年に公開されたサイコ・スリラーの傑作『透明人間(The Invisible Man)』をご紹介します。
この映画は、古典的なホラーキャラクター「透明人間」を現代風にアップデートし、**“見えない恐怖”**を巧みに描いた作品。
視覚化されない狂気が、観客にじわじわとプレッシャーをかけてくる…そんなスリル満点の一本です。
🎬 映画『透明人間』基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
原題 | The Invisible Man |
公開年 | 2020年 |
監督・脚本 | リー・ワネル(『ソウ』脚本家、『アップグレード』監督) |
ジャンル | サスペンス/ホラー/スリラー |
上映時間 | 124分 |
出演 | エリザベス・モス、オリヴァー・ジャクソン=コーエン、オルディス・ホッジ 他 |
配給 | ユニバーサル・ピクチャーズ |
🧠 あらすじ(ネタバレなし)
逃げ場のないDV関係に苦しんでいたセシリアは、ある夜、富豪で科学者の恋人・エイドリアンの家から脱出する。
やがて彼の**「死」の報せ**が届き、自由になったはずのセシリアだったが、奇怪な現象が周囲で起き始める。
何かが「いる」のに、誰にも見えない――
セシリアは、自分が再び支配されているのではないかと疑い始める。
💡 レビュー|“見えない”ことが、これほど怖いとは…
🎭 エリザベス・モスの圧巻の演技
主演のエリザベス・モス(『ハンドメイズ・テイル』)が、本作の中核を担っています。
「透明な何か」に怯える彼女の演技は、観客にも不安や恐怖をしっかり伝えてきます。
演技力に説得力があるからこそ、“姿のない悪”がよりリアルに感じられるのです。
🔍 ミニマルな演出が逆に怖い
この映画の秀逸な点は、恐怖の「見せなさ」。
カメラが無人の部屋をじっと映すだけで、観客は何かがいるのではと疑心暗鬼に。
BGMも少なく、音や視線の動きだけで不安を煽る演出は、心理的に非常に効いてきます。
🧪 サイエンステクノロジー × DVサスペンス
単なるSFホラーではなく、本作が描くのは**現代社会の「見えにくい支配」**です。
DVやモラハラといった問題を、「透明」という形で具現化。
加害者は物理的には見えなくても、被害者は常にその存在を感じ、支配される――
という構造が巧みに重ねられています。
📊 評価まとめ
項目 | 評価 |
---|---|
恐怖演出 | ★★★★★ |
ストーリー性 | ★★★★☆ |
社会的テーマ性 | ★★★★★ |
演技力 | ★★★★★ |
リピート価値 | ★★★★☆ |
👥 こんな人におすすめ!
- 心理的な恐怖が好きな人
- 『ゲット・アウト』『アス』のような社会派ホラーが好きな人
- シンプルな演出でゾクゾクしたい人
- ハイテク×スリラーの現代風ホラーを楽しみたい人
📝 まとめの感想(ロングバージョン)|“見えない支配”が描き出す、現代に潜む恐怖とは?
『透明人間』は、「姿を消せる男」の暴走を描いた単なるSFホラーではありません。
本作の恐怖の本質は、加害者が“物理的にいなくても”被害者を追い詰められるという、現代的かつリアルなテーマに根ざしています。
セシリアが体験する“誰にも信じてもらえない”恐怖は、DVやハラスメントの被害者が直面する社会的孤立とそっくり。
目に見える暴力よりも恐ろしいのは、誰も証明できない“支配”や“操作”。
観客は、セシリアの視点を通してその圧力を体感させられ、じわじわと心が締めつけられます。
また、監督のリー・ワネルは視覚的な演出を極限まで抑えながらも、逆にそれを武器に変えるという演出手腕を見せつけました。
「カメラが静かにとどまる」だけで、そこに“何かがいる”ような錯覚を与える技術は、極めて高度な心理的トリック。
さらに、主演のエリザベス・モスが魅せる演技も圧巻。
彼女の震える目、息を潜める仕草、限界を超えていく表情…。
それらすべてが、この作品を“現代ホラーの新たな金字塔”に押し上げています。
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