【映画レビュー】『パッセンジャー』|宇宙の孤独と恋愛、選択の重みを描いたSFロマンスの意欲作

SF

今回ご紹介するのは、2016年公開のSF映画『パッセンジャー(Passengers)』。
クリス・プラットとジェニファー・ローレンスという大スター2人が、宇宙船の中でたった2人きりというシチュエーションで織りなすロマンスとサスペンス。

美しい映像と静かな時間の流れの中で、
**「孤独」「罪」「愛」「人間の本質」**がゆっくりと浮かび上がってくる、大人向けのSFドラマです。


🎬 基本情報:『パッセンジャー』

項目内容
原題Passengers
日本公開2017年3月24日
監督モルテン・ティルドゥム(『イミテーション・ゲーム』)
脚本ジョン・スパイツ(『ドクター・ストレンジ』『プロメテウス』)
出演クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、マイケル・シーン、ローレンス・フィッシュバーン
ジャンルSF/ロマンス/サスペンス
上映時間約116分

🛰 あらすじ(ネタバレなし)

近未来、人類は新天地を求めて移住船「アヴァロン号」で他の惑星へ向かっていた。
5000人の乗客は約120年の冬眠状態に置かれていたが、航行中、機械技師のジム(クリス・プラット)が予定より90年も早く目覚めてしまう

彼は宇宙船の中で完全な“孤独”を味わいながら、1年以上を過ごす。
やがて、彼はもう一人の乗客、作家のオーロラ(ジェニファー・ローレンス)を起こしてしまう――。

孤独から始まった恋、
その背後にある罪と選択、
そして船に迫る危機。
2人は、愛と運命の中で重大な決断を迫られる


🎥 映画レビュー|ロマンスとサスペンスが交差する、静かで深いSF作品

🌌 美しさと恐怖が共存する宇宙船という舞台

この映画の魅力は何といっても、密閉空間・無重力・静寂な宇宙という圧倒的な孤独感。

清潔で美しい船内とは裏腹に、広大な宇宙空間で「たった一人で生きる」という不安が観る者の心を刺します。
それでいて、インテリアや映像表現はどこまでもスタイリッシュ。
まるで高級ホテルと死の宇宙を同時に旅しているような、不思議な感覚を味わえます。


🧠 倫理と愛の間で揺れる主人公の選択

最大のテーマは、「誰かを愛するために、誰かの人生を奪っていいのか?」という道徳的ジレンマ

ジムの選択(※ネタバレ回避のため詳細は伏せます)は、多くの視聴者を議論させました。
彼の孤独と切実さに共感する人もいれば、「それは自己中だ」と批判する人も。

しかし、その「答えの出ないモラル」が本作をただのSFラブストーリーに終わらせず、人間の本質に問いかける力を持っています。


💑 クリス・プラット×ジェニファー・ローレンスの共演が生む緊張と温度差

クリス・プラットは素朴で不器用な男を誠実に演じ、
ジェニファー・ローレンスは内面の怒りと葛藤を繊細に表現しています。

2人の“立場の非対称性”が物語の緊張感を高め、
だからこそ最後の選択がより重く、観る者の胸に残ります。


📊 評価まとめ

項目評価(5段階)
ストーリー★★★★☆(テーマ性◎)
映像美★★★★★(宇宙描写は圧巻)
ロマンスの深さ★★★★☆
サスペンス性★★★☆☆
感情移入度★★★★☆

📝 まとめの感想|宇宙という密室で向き合う「孤独」と「赦し」──人間の本質を静かに問うSFロマンス

『パッセンジャー』は、いわゆる派手なSFアクションではありません。
この作品の核にあるのは、「誰かと共に生きたい」という、極めて人間的で切実な願いです。

宇宙船という無限の閉鎖空間の中で、たった1人目覚めてしまった男の絶望。
そして、その孤独に耐えきれず、禁断の選択をしてしまう人間の弱さ。
この映画は、そうした“倫理の境界線”に正面から向き合い、観る者にも静かな問いを投げかけます。

観客の中には、ジムの行動に「それは裏切りだ」「身勝手すぎる」と強い嫌悪を抱く人もいるでしょう。
一方で、「誰だって孤独には耐えられない」「生きるためには誰かの存在が必要だ」と、彼に共感する人もいる。
正解がないからこそ、この映画は観る人の心をえぐり、記憶に残るのです。

また、オーロラという人物がただの「選ばれたヒロイン」ではなく、
自らの運命に怒り、葛藤しながらも、やがて“赦す”という選択をしていく姿も深く胸に迫ります。
愛とは、「誰かと未来を共有すること」だけではなく、
「相手の過ちや弱さを受け入れること」なのだと、この映画は教えてくれます。

そして終盤、2人がたどり着いた未来。
そこには、誰もが一度は考えたことのある「誰かと生きる意味」が詰まっています。
文明の喧騒も、他人との比較もない宇宙の中で、2人きりの時間をどう生きるか。
それは決して「退屈なラブストーリー」ではなく、“人生の本質”を問う哲学的な物語でもあります。

さらに、船内の映像美や、静寂と緊張が織り交ざった音響、
AIバーテンダーとの会話や、植物が育つ緑地など、細部に至るまで
「宇宙における人間らしさ」へのこだわりが感じられ、まさに大人向けの知的SFと呼ぶにふさわしい作品です。

大きな音も、派手な爆発もない。
けれど、じわじわと心を締めつけ、問いを残して去っていく。
そんな映画を求めるあなたに、『パッセンジャー』はきっと響くでしょう。

それは、**「たった一人で生きることの虚しさ」と、「誰かと共に生きることの奇跡」**を描いた、
静かで、孤独で、でも確かな愛の物語です。

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